田村公江（たむら・きみえ　1957-）

▼人
□哲学・倫理学。愛知県出身。京都大学。龍谷大学教授。

▼文献
●田村公江、2002「「自己決定する自己」と身体――精神分析の発想から」金井・細谷編[2002：36‐58]

■金井淑子・細谷実編、2002『身体のエシックス／ポリティクス――倫理学とフェミニズムの交叉』ナカニシヤ出版.

▼引用
●田村公江、2002「「自己決定する自己」と身体――精神分析の発想から」金井淑子・細谷実[2002：36‐58]
□「ところが自己決定原理には、出生前診断や選択的中絶という問題において明瞭に見て取れるように、弱者の側をかえって不利な立場に追い込むという側面もある。というのも、出生前診断を受けるか受けないか、そして胎児に障害があるとわかった時点で中絶するかしないか、こういったことはすべて自己決定として当事者に委ねられることになるからである。個人的な事柄において排他的不可侵的な主権者であるという強みが、このような問題においては、むしろ裏目に出る。なぜなら当事者は、中絶するにせよしないにせよ、もともとは社会の問題であった障害者差別の問題を、「障害者差別はよくないと思うが、自分の問題となると、育てる自信がない」という思考回路に閉じ込められることによって、個人的領域で引き受けさせられてしまうからである。筆者に言わせれば、これは社会的問題を個人的問題にすり替えるに等しい。
　自己決定原理が弱者の側の権利保護や自己主張の拠り所となることは、こうなると、社会から弱者をなくすことに役立つというよりは、弱者の強化と引き換えに自己責任を押しつけて、社会的問題を見えなくすることにつながってしまう」（37‐38）

△キーワード：自己決定　自己責任　女性の自己決定

◆20100213, 0304, 0502, 0523, 20130106

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