阪本昌成（さかもと・まさなり 1945-）
△キーワード：私的自治 市民社会
■阪本昌成、1993『憲法理論U』成文堂.
□「[56]〈自由は責任を伴っている〉と主張することは、不評をかいがちである。しかし、自由と責任とがワンセットであると強調することは、重要な視点である。行為者が自己の行為に責任を負わなくてもよいのであれば、自由を語る意味はない。
先に、われわれの知識は不確実で、分散されていること、それでも、私の環境と私の置かれた条件について、おそらく私が一番良く知っているであろうこと、についてふれた。私は、自由であれば（他者の欲する通りの選択をしなければならない状況が排除されれば）私の自己愛を実現するために、私の知識と能力との最大量を用いることができる。
ところが、私のその行為は、思う通りの成果をもたらさないかもしれない。それでも、その不十分な成果は、誰のせいでもない。私は、リスク覚悟で行為するのである。不十分な成果は、私の責任である。それを「社会の責任」と呼んではならない。
その逆に、私の行為は、私の想像以上の成果をあげるかもしれない。それを「社会のおかげである」と呼ぶ必要はない。さらには、私の得た物の一部は社会の持ち分である、と考えることも正しくない。生産と分配とを切り放して観念する必要はない」（75‐6）
△キーワード：自由 責任 自己統治
□「責任が自由と結びついている以上、責任は、私が統制できる範囲にのみ及ぶよう限定されなければならず、その範囲を超える責任を私は問われることはない。右範囲を超えて責任を問うことは、法的・道徳的にも正当化されえない。したがって、私は見ず知らずの人びとや社会に対して法的責任を負わなくてもよい」（76）
□「われわれの行為は、常に他者からの批判・非難・賞賛・羨望の対象となっている。他者からの評価のなかで生活しながら、われわれは、実際の行為を決定している。責任の観念が登場するのは、その場面である。
各人に責任を割り当てるのは、ある人が、本来なすべきでないこれこれのことをなしたことを非難するためではない。
責任の観念は、社会的評価によって個人の行為に影響を与え、全体として好ましい結果を得るためである」（77‐8）
□「「意思の自由」問題は、法的・道徳的責任を論ずるにあたっては、幻想的論点にすぎない」
△キーワード：自由意志問題
□「「幸福追求権」は、すでに何度も繰り返してきたように、個別・多様な人間が、有限知のなかで、実践知を習得しながら、他者からの強制を受けることなく、自己愛を最大化するための「一般的自由」を保障しているのである」（242）
△キーワード：幸福追求権 一般的自由
□「「人間の尊厳」は、「個人の尊重」とは異なって、人間存在の共通性を強調した概念である」「これに対して、「個人の尊重」は、右の「人間の尊厳」を超えて、個人個人の属性の個別・多様性に配慮されることをいう。「個人の尊重」を支えるものは、道徳的・理性的存在としての人間共通の特性ではなく、各人の違い、すなわち、個別性である」（139）
△キーワード：人間の尊厳 個人の尊厳 個人の尊厳