中村英代（なかむら・ひでよ　1975-）

▼人
□社会学。東京出身。東京大学、お茶の水大学、博士（社会科学）。日本学術振興会特別研究員、お茶の水女子大・東洋大学ほか非常勤講師。

▼文献
■中村英代、2011『摂食障害の語り――〈回復〉の臨床社会学』新曜社.

▼引用
□「本書では一貫して〈回復〉の語りを意義あるものとして評価してきた。しかし、最後にどうしても述べておきたいことがある。それは、回復者が提示する〈回復〉のあり方を、手放しで評価することはできない、という点だ。以下で見ていくように、回復者たちの物語もまた、専門家の物語と同様に、ある種の危険をはらんでいるからだ。
　第4章では、18名の〈回復〉の語りを提示したが、第5・6章は、本書があたかも「食べれば治る」という立場にあると読まれてしまう危険がある。そして、「食べれば治る」という解釈には、回復を摂・・265　食障害者個人の自己責任の問題として閉じてしまう危うさが、たぶんに含まれている。食べれば治るという解釈は、ある人々には希望をもたらす。しかしすべての解釈と同様に、受けとめ方によっては、いま苦しんでいる人々にとって抑圧的な物語に容易に転じてじまう。
　[…］
　当事者の主体性という名の下に、摂食障害やそこからの回復が自己責任に委ねられ、当事者が回復支援のための社会的・医療的な措置の枠外に放置される事態は避けなければならない。個人の自立や解決権が保持されつつ、回復のために当事者たちが利用可能な社会的サポートや医療サービスの整備が求められる。また、回復できない状況にある個々人が、居心地の悪さや恥ずかしさを感じることなく生きていられる空間も必要だ」（中村［2011：265-266］）

◆20111030, 20130107

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