Nagel, Thomas.（1937-）

▼人
□ユーゴスラビア（セルビア共和国）、ベオグラード出身。哲学。ニューヨーク大学。

▼文献
■Nagel, Thomas. 1979. Moral Questions. Cambridge University Press. ＝永井均訳、1989『コウモリであるとはどのようなことか』勁草書房.
■Nagel, Thomas 1986. The View from Nowhere. Oxford University Press.＝中村昇・山田雅大・岡山敬二・齋藤宜之・新海太郎・鈴木保早訳、2009『どこでもないところからの眺め』春秋社.
■Nagel, Thomas 1987. What Does It All Mean? A Very Short Introduction to Philosophy. Oxford University Press. ＝岡本祐一朗・若松良樹訳、1993『哲学ってどんなこと？――とっても短い哲学入門』昭和堂.

▼引用
■Nagel, Thomas. 1979. Moral Questions. Cambridge University Press. ＝永井均訳、1989『コウモリであるとはどのようなことか』勁草書房.
□「われわれはまた、責任という概念のうちにどれほど深くパラドックスが埋め込まれているかを、見ることができる。人は自分が為したことに対してのみ道徳的責任を負いうる。しかし、彼が為したことは彼の為していない多くのことの結果なのである。それゆえに、彼は責任のあることに関しても責任のないことに関しても、道徳的責任がないことになる」（55）

■Nagel, Thomas. 1986. The View from Nowhere. Oxford University Press.＝中村昇・山田雅大・岡山敬二・齋藤宜之・新海太郎・鈴木保早訳、2009『どこでもないところからの眺め』春秋社.
□責任（196-204）

■Nagel, Thomas 1987. What Does It All Mean? A Very Short Introduction to Philosophy. Oxford University Press. ＝岡本祐一朗・若松良樹訳、1993『哲学ってどんなこと？――とっても短い哲学入門』昭和堂.
□「今までは決定論が責任を脅かす最大の脅威であったように思われました。しかし今では、私たちの選択が前もって決定されていないとしても、次のことを理解するのは依然として困難であるように思われます。すなわち、実際には行なわないことを、私たちはどうして行なうことができるのでしょうか。前もっては、二つの選択肢のいずれも起こりうるかもしれません。しかし、そのどちらが起こるかを私が決定しなければ、私には責任がありません。それはちょうど、私のコントロールできる範囲を超えた原因によってそれが決定されていた場合と同様です。では、どちらが起こるかを決定するものは何もないとすれば、どうやって私は・・78　それを決定できるのでしょうか。
　こうしたことは、決定論が本当であれ、あるいは間違いであれ、私たちには自分の行為に対して責任がないという驚くべき可能性を引き起こすのです。決定論が本当であれば、先行する環境に責任があります。逆に、決定論が間違いであれば、何ものにも責任はありません。そうすれば、本当に袋小路に陥るでしょう。
　ところで、もう一つ別の見解がかのうですが、それは私たちがこれまで言ってきた大部分のこととはまったく正反対のものです。それによれば、私たちの行為に対する責任は、その行為が決定されていないことよりも、むしろ決定されていることを要求するのです。その主張によれば、行為があなたの行なったものであるためには、それはあなたの中にある特定の原因によって生み出されなければならないのです。［…］・・79
　この立場によれば、因果的に決定されているだけでは自由を脅かすわけではありません。――ただある種の原因だけが自由を脅かすのです」（79-80）

▼メモ
◆道徳的運
□「しかし、本当に自分がやったことに、自分に「責任」が生じるといえるのか。例えば、たまたま「運」が悪かったというときにも、私に「責任」は生じるのか。「道徳的運」を指摘する、ネーゲル（Negel[1979＝1989]）やリップスタイン（Ripstein[1999]）の論。道徳的運については、福間聡[2001]、井上彰[2004]のレビュー。「道徳的運」を指摘する論者は、「道徳的運」を考えると「自己責任」のしくみは疑わしいのではないか、と異議申し立てをおこなう。とすると「道徳的運」をいう論者も、議論の前提として「自己責任」のしくみがあることを、まずは認めているといえるだろう。本稿は、「道徳的運」を指摘する論者もまた自明の前提としている、「自己責任」のしくみがなぜ成立するのかについて、考察する」

◆20100706, 0826, 20110612, 20130107

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